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PGConに向う途中です。 搭乗まで時間があるので、先日リリースされたPostgreSQL 11でVacuum機能の改善がいくつかあったのでその中から2つ紹介します。

一つ目: Update the free space map during vacuum (Claudio Freire)

Vacuum中にFree Space Map(FSM)が更新されるようになりました。(Claudio Freire)

これまでVacuum(FULLオプションなし)では、Vacuumの実行完了後にFSMを更新していました。そのため、例えばVacuumが長時間化した場合や、Vacuumが途中でキャンセルされた場合ではなかなかFSMは更新されず、テーブルの肥大化が進んでいました(※)。

PostgreSQL 11ではこの新機能により、Vacuum実行中にもFSMが更新されるようになったので上記の心配はなくなりました。 インデックスがあるテーブルへのVacuumでは、Vacuumがmaintenance_work_memで設定されたメモリを使い切る度に、そして、インデックスがないテーブルへのVacuumでは、8GBをVacuumする度にFSMが更新されるようになります。 FSMはテーブルに比べるととても小さいので頻繁に更新されるようになっても大きな影響はないと思います。

(※)FSMはテーブルの空き領域を管理しているマップです。INSERTやUPDATEの際は、このFSMを参照してテーブルにないので空いている箇所に新しいタプルを挿入します。なので、FSMが更新されていないと、「本当は空き領域があるのに使ってくれない」という状況になってしまいまいます。

二つ目: Allow vacuum to avoid unnecesary index scans (Masahiko Sawada, Alexander Korotkov)

Vacuumが不必要なIndex scanを回避するようになりました。(Masahiko Sawada, Alexander Korotkov)

Vacuumはテーブルとインデックス(複数)の両方をVacuumを掃除する必要があるのですが、インデックスについては一回のVacuum実行つき、最低1回は実行する必要がありました。Vacuum実行につき最低1回、というのはVacuumで実際にゴミを掃除したかどうかに関わらずです。

そのため、例えばテーブルに複数インデックスが付与されている場合では、テーブルが全く汚れていなくても、Vacuumを実行すると全てのインデックスについてVacuumするので、とても時間がかかっていました(※)。この「テーブルが汚れていなくても(テーブルにゴミがなくても)実行されるインデックスへのVacuum」はドキュメント上ではCleanup Stageと呼ばれており、インデックスの統計情報の更新や、インデックスにあるゴミ掃除を目的として実行されます。

PostgreSQL 10以前では、以下のように1行を挿入しただけでも、cleanup stageが実行されるため、Vacuumに時間がかかっています。

=# INSERT INTO test VALUES(1);
INSERT 0 1
Time: 15.207 ms
=# VACUUM VERBOSE test;
INFO:  vacuuming "public.test"
INFO:  index "test_idx" now contains 100000001 row versions in 274194 pages
DETAIL:  0 index row versions were removed.
0 index pages have been deleted, 0 are currently reusable.
CPU: user: 0.09 s, system: 2.29 s, elapsed: 5.55 s.
INFO:  "test": found 0 removable, 199 nonremovable row versions in 1 out of 442478 pages
DETAIL:  0 dead row versions cannot be removed yet, oldest xmin: 31055
There were 0 unused item pointers.
Skipped 0 pages due to buffer pins, 0 frozen pages.
0 pages are entirely empty.
CPU: user: 0.12 s, system: 2.29 s, elapsed: 5.58 s.
VACUUM
Time: 6725.698 ms (00:06.726) -- 6秒の内のほとんど(5.5秒)がインデックスVacuum(cleanup stage)によるもの

そこで、「前回のVacuumからテーブルが大きく状況が変わっていなければ、cleanup stageはスキップしてもいいよね」というアイディアのもと、vacuum_cleanup_index_scale_factorという新しいGUCパラメータが追加されました。

vacuum_cleanup_index_scale_factorには、0から100の間で値を設定する事ができ、デフォルトは0.1です。これは、「テーブルが、前回のVacuumから 0.1% 変わっていなければインデックスのVacuumをスキップする」という事を意味します。postgresql.confにも個別のインデックスにも設定することができます。

ただし、注意点が2点あります

  • テーブルに一つでもゴミがある場合は、インデックスのVacuumは実行されます
    • この機能でスキップできるのは、cleanup stageのみです。テーブル内にゴミがあれば、通常のインデックスVacuumが実行され、cleanup stageは実行されません。
  • 対象となるインデックスはB-treeのみです

つまり、この機能は頻繁に更新されるテーブルには効果がなく、大規模であまり更新されないテーブルに効果があります。例えば、分析用途などで大量のデータが挿入されるテーブルには非常に効果を発揮する機能です。 設定値を大きするほど、インデックスへのVacuumをスキップするのでVacuumの実行時間は短くなりますが、その代わりにインデックスの統計情報(インデックスサイズやインデックスのエントリ数)が更新されないため、生成される実行計画に影響があります。

PostgreSQL 11では以下のようになります。

=# INSERT INTO test VALUES (1);
INSERT 0 1
Time: 24.499 ms
=# VACUUM VERBOSE test;
INFO:  vacuuming "public.test"
INFO:  "test": found 0 removable, 17375 nonremovable row versions in 77 out of 442478 pages
DETAIL:  0 dead row versions cannot be removed yet, oldest xmin: 582
There were 0 unused item pointers.
Skipped 0 pages due to buffer pins, 0 frozen pages.
0 pages are entirely empty.
CPU: user: 0.02 s, system: 0.00 s, elapsed: 0.03 s.
VACUUM
Time: 182.686 ms -- インデックスVacuum(cleanup stage)が実行されていないのですぐ終わる

(※)ちなみに、テーブルが全く変更されていない状況では、テーブルへのVacuum処理はスキップされ一瞬で終わることができます。

それではPGCon行ってきます。